底知れぬ怒り

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 待ちに待った予約日当日。  遅刻して『あのデブとグル疑惑』を抱かせないよう、私は一時間余裕を持って出発した。  店長の突撃を恐れてか、良子さんはホームページに店の具体的な住所を載せず、予約日当日に電話でリアルタイムでナビする形式をとっていた。  所々で車を停めては良子さんに電話した。 『じゃあ、今いるラーメン屋さんを右に曲がったら、黒い建物が見えてくるから、そしたらまた電話してっ! あ! 私これから施術に入るから、変わりにうちの従業員が案内するけど、大丈夫? 』 「あ! はい! わかりましたあ! 」  良子さんが断りを入れた通り、次回からは別のスタッフが電話に出た。 ハスキーな良子さんの声よりも更に低いが、口調や声色は明るく、ハキハキしていて好印象だった。 道案内と言う事務的なやり取りを少ししただけだが、そのわずかな時間で私はこの人とは気が合うと確信できた。
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