それぞれが背負ったもの

18/45
前へ
/395ページ
次へ
 良子さんもまさかと店長の家まで様子を見にいったが、そこは既に引き払った後だったらしい。 広告費も全て踏み倒して逃げたようだ。 「そのことを田丸に伝えたら “人として最低ですね” って返ってきたよ。 ……お前が言うなって思ったけどね。」  私の鎖骨周りを流しながら良子さんが苦笑した。 「良子さん、優しいですね。あんな風に良子さんを裏切った人間に対しても、ここまで協力してあげるなんて……」 「んんー? 私は確かに田丸は嫌いだけど、店長も嫌いだから、悪い人が捕まればいいなって思いで動いただけっ! 」 そう言って良子さんはカラカラと笑って見せた。 やっぱりまたこの人と出会えてよかった。 「……それにしても、店長も酷いですよね。 あんな形とは言え、自分を慕ってくれてた田丸さんまで裏切って…… これじゃあ、最後に誰も残らないですよ。」 「や、先に裏切ったのは田丸! 」 本日何度目かの『マジッスか』が店内に木霊した。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1704人が本棚に入れています
本棚に追加