それぞれが背負ったもの

39/45
前へ
/395ページ
次へ
「実は、支店の店長をソフィアさんに頼もうかなって思ってて……」 「てんちょぉおあっ?! 」 香港映画のように声が裏返った。 いやいやいやいや! 私みたいな下っ端が良子さんの支店の店長とか! 「うち、給料はいいよ? 施術に入れば五割懐に入るし。」  昔の私なら真っ先に食いついていただろう。 だが今は、歩合率の高さからくる泥沼は避けたい。  勿論、良子さんのお店ならそういったことはないと思うが、今のお店では本当に良くして頂いている。  県外に出張に行った時なんかは、社長がわざわざ自らポケットマネーをくれたくらいだ。  こんなによくして頂いているのに、給料の条件がいいという理由だけで『はいそうですか』と乗り換えるのは、私のなけなしの良心が許さなかった。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1704人が本棚に入れています
本棚に追加