それぞれが背負ったもの

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 こう言う時、保険と言う弱点を隠して利点だけを述べた方が、私を引き抜ける確率は上がるだろう。  だが良子さんは、自分のメリットよりも、私の立場に立って考えてくれたのだ。 「じゃあ……ニサンで人件費削減が始まって、あっちにあまり入れなくなったら、お願いしますっ! 」  私が冗談ぽく提案すると、良子さんもクスリと笑い、ノッてくれた。 「うん! あっちに入れなくなったら、いつでもおいで! 」  ソラリスを辞めてからはこんなにもいいこと尽くしだ。 だから頼む。 もう止まってくれ……  シェバトの帰り道、自分でも何故泣いているのか分からないまま、私は車を走らせた。
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