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「ちょっと?! 早くこっち来て! 父さん! 父さん!! 」
ただならぬ母の声色に、私の体が凍りつく。
「めっちゃん! めっちゃん! 」
母が呼んだめっちょの名前に反応し、私は弾かれたように部屋を飛び出した。
階段を全速力で駆け降りる。
はやる気持ちに脚がついていかず、何度ももつれかけたが、そんなことなどどうでもよかった。
私は神経を耳に集中させた。
こうして降りている間、母のめっちょを呼ぶ声は涙声になり、やがて咽び泣きと変わっていった。
大の大人のこんなに大きな鳴き声は、今だかつて聞いたことがなかった。
私が声の発信地にたどり着くと、そこにはうずくまって大声で泣いている母と……
その左脇から、横たわっためっちょの後ろ脚が見えた。
私は再び駆け出していた。
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