水と水

22/52

1704人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
 重力に従って下を向いためっちょの瞳は、濁りがかったビー玉のようだった。 ああ……魂が抜けたとは、こういうことを言うのだな…… 感情に呑まれ、ショートした頭でぼんやりと思った。 「よかったね……家で……」 母が壊れ物を扱うように、そっとめっちょに膝枕をした。 「家で、死ねて、よかったね……」  ゆっくりとめっちょの丸い額を撫でながら、優しく紡がれた母のこの一言で、私は漸くめっちょの死を受け入れることができた。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1704人が本棚に入れています
本棚に追加