水と水

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 ニサンに着き、泣きながら開店準備を済ませる。  一段落した所で、乾燥機から出したブラウンのフェイスタオルをたたむ。 乾燥機にかけ、ふんわりとしたタオルの感触ですら、今の私には、めっちょの柔かな毛並みを連想させ、涙の素となっていた。  開店したからには、化粧くらいは直したかったが、あまりの出来事に動揺し、化粧道具を丸々家に置いてきてしまっていた。  せめてクマのようになった下瞼のアイラインだけでもと、濡らしたティッシュで拭き取った。  他のスタッフが出勤して来る前に涙を止めないと…… 事情を聴かれたときに、あの出来事を口にするのはごめんだった。 まだ悪い夢だと思っていたかった。
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