水と水

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「…………父さんに、代わって。」 「どしたの? 用事なら伝えとくよ? 」 こればっかりはそうはいかない。 「お願い。代わって。直接じゃないと意味ないから。」 一言一句、ハッキリと句切って述べた私の要求に、母も若干戸惑いながら応じてくれた。  車を一時停めたのだろう。 少し間を開けてから、父の落ち着いた声が聞こえた。 「もしもし? 父さん? 」 「どした? ……さっき、葬式してきた。…………めっちょ、骨になっちゃった……」 言うのを躊躇ったような間と、小さい子供をあやすような口調から、父が私を気遣ってくれているのがわかった。 皮肉にも、めっちょの生前には殆ど見られなかった父の心遣いだった。  それに心暖めるよりも先に、私は自分が伝えるべき要求を述べた。 「オカンのこと、お願い。」 「……わかった。」 再び視界が滲み、声が震える。 「やさしくしてあげてね? たのむ……たのむよ……おねがいだから……」 「うん……わかったよ。」 最後の方は嗚咽混じりで殆ど呂律が回っていなかったが、父は理解してくれたようだった。
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