水と水

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母が小声で呟く。 「お腹一杯食べたっていいからね……おなか、いっ……ぱい……たべたって……」 何度も何度も、天国にいるめっちょに届けるように呟く母の横顔を見て、私は居たたまれない気持ちになった。 「おりこうだった……本当におりこうな犬だった……」 母の呟きの内容が変わってから、漸く私も喋れるようになった。 「そうだね……世界一可愛かったね……」  いつもなら親バカと笑う私の台詞に素直に頷くと、母はあの日のことを話し出した。 それを聞けばきっと私は涙が止まらなくなるだろう。 それでも、聞かなければならないような気がした。 母の為に。
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