水と水

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「…………父さんね、あの日、機嫌悪くて……散歩の時めっちょが立ち止まっても、無理矢理引っ張りつけて帰っちゃったんだって…… あのとき……」 言葉に詰まったように肩を震わせてから母は続けた。 「“あの時、抱っこしてあげればよかった……” って、とうさんないてたっ……! 」 言葉にならなかった。 父の気持ちが我が身のように痛かった。 私もあの時、階段を上らず、遅刻してでも最後まで側にいてやればよかった…… 出し尽くした筈の涙が、玉のように頬を伝った。
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