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私はなんと声をかけていいかわからなかった。
自らも体験したあの悲しみの前では、どんな言葉も薄っぺらい。
それでもかけないよりはと思いもしたが、接客業の私とサラリーマンの父の休みは噛み合わず、時間の波が残酷にも父だけを取り残していった。
母から聞いた父の近況だが、ずっと口を開けば
『あの時、抱っこしてやればよかった。』
『こんなことなら、帰ってきた時、もっとよしよししてやればよかった。』
と呟いているらしい。
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