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私が九年片想いした人と同じ関西弁で、透き通ったテノール。
裏表がなく、マイナスなことを一切言わない本当に出来た人だった。
男性不信になってもおかしくないようなあの環境で、この人なら大丈夫と思わせてくれる存在だった。
異性として見られることが大嫌いな私が、この人からの誉め言葉だけは好意的に受け止めれた。
たった五回しか担当したことがないのに、一番仲が良いお客様だと確信できた。
そんな藍田さんに、退職が決まってから私は一度も会えなかった。
運命のイタズラと言ってもいいほどのすれ違いにより、直接会って挨拶できなかったのだ。
チャンスはあったのに。
何度も何度もあったのに……
最後、なんとか電話で挨拶出来たものの、このことは私の中で大きなシコリとして残っていた。
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