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家まで車を走らせる途中、思い出すのはいつも藍田さんとの思い出。
出会いからその存在を意識するようになるまでの楽しかった思い出……
しかし、一人でいる時間が長くなるほど、その思い出はやがてスレ違ってしまった頃の辛い記憶へと移行していく。
そして……通勤路に位置し、どうしても通らなければいけない藍田さんの泊まっているホテル。
その前に差し掛かると、必ず最後に電話でしたやり取りが鮮明に蘇ってくる。
『私、藍田さんに会えなくなることだけがずっと心残りだったんですよ……』
別れ際に涙をこらえていった私の紛れもない本心。
それに対して藍田さんは……
『まったあーっ!』
店長に見つかれば給料ゼロにされ、内定が決まっていた新しい職場にも連絡されかねない。
その店長がいつ帰ってくるかわからない状況下で、私が腹を括ってやっと話した思いを、ただの社交辞令として流されたような気がした。
『……ッホントだもぉんっ!!』
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