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背中をバシバシ叩いてくる鷹に隼汰は少し不満を持ちながらも、怒っても仕方ないと結論着けてその言葉に従った。
郊外にある一件の骨董店のようなアンティークの作りをした店、『フォルビート・モンディアーレ』。骨董店のように見えるこの店は、人形…主にフランス人形のような人形や、その人形の服を作る人形専門店だ。
そこが隼汰の家だった。
隼汰の父親は海外からも声のかかる、有名な人形師だった。
「相変わらずいつ来てもすげーな」
入った途端に素晴らしいロリータ人形が仲良くお出迎え。中に入る度にちらほら目に付く人形たちや、壁や棚にところせましと飾られている人形の服。
鷹は人形が嫌いではないので、入る度にその世界に圧倒されてしまう。
ふと、鷹は昔に隼汰から聞いた言葉を思い出した。それは鷹が聞いたというのもあったのだが。
隼汰と知り合ってまだ間もない時に、鷹はこの店に初めて入った。
看板を見ながら店名を口にしたのを覚えている。
『ふぉるぼーと、もであーれ?』
『…‥フォルビート・モンディアーレ、だ』
『おぉぅっ!!で、どんな意味?』
『‥……確か、イタリア語で洗練された世界って意味だったきがする』
『世界?すげぇッ!!』
『…‥‥お前、驚く所違う』
店内に入ると本当に世界で、まだ人形の事が良く分からなかった鷹でさえ言葉を失い、その世界に引き込まれた。
『すごいだろ?』
その時のキラキラした隼汰の顔は、嬉しそうとか自慢とか希望とか混ざった感じがして。
『僕も父さんみたいな人形師になるのが夢なんだ』
そう、照れくさそうにいった隼汰の顔にも見とれて。
こいつなら一緒に居て楽しくなる、と鷹が確信した瞬間だった。
「―…‥ぃ、おいタカ、大丈夫か?」
急に現実に引き戻される。
「…‥大丈夫か?」
気が付くと、隼汰が心配そうに鷹の肩を揺すっていた。
「‥……あれ?」
「あれ?じゃないだろ…いきなりぼーっとするからビックリするだろ!」
どうやら自分は随分と長い時間呆けていたらしい、と鷹が自分なりに結論付ける。
鷹が大丈夫だと分かった途端、隼汰は肩から手を放し違う方を向いてしまった。そこで鷹は少し考えた。
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