#1 ウエディングドールと魔術本

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「‥…もしかして、心配した?」 「…‥ッ!!」   振り返った勢いのまま鞄を鷹の腹部に投げつける。その直後に蛙が潰されたようなうめき声が聞こえた。   「だれがッ!!お前なんか心配するかッ!!」 「ちょ…‥いくらなんでも、これは…‥」 「お前が変な事言うからだ!!」 「‥…顔赤くして言われても‥‥ぅぐッ」   床でうめいていた鷹のみぞおちに、隼汰の蹴りが一発。拍手を送りたいほど綺麗に入る。   「お前なんかッ」 「ぎゃッ」   蹴り一発。 その後に聞こえる蛙な声。二人はそれを何度か繰り返す。   「死ぬッ死ぬ死ぬッ死ぬって!!」 「‥……お前なんか死ねばいいじゃんか!!!」 「シュンちゃん、それはちょっと酷すぎるッ!!」 「…‥隼汰、それぐらいにしておきなさい」   大きなため息と共に聞こえた声に、二人とも動きを止めて振り返る。そこにはなかば呆れた隼汰の父親、河内辰起(カワウチタツキ)がいた。   「だって、コイツが変な事言うから…‥」   そして再び蹴り一発。自然と聞こえる蛙の鳴き声。 その状態を見て、辰起は深々とため息をつく。   「こらこら、隼汰。そのままでは鷹君が死んでしまうよ?」 「お父様たすけてぇぇ‥」   うっ、と息が詰まったように動きを止める隼汰。その反応が気に入ったのか、辰起は尚も言った。   「それに、今日は鷹君をいじめるために呼んだのか?」 「‥…う。」 「たすけてぇぇ‥…」 「折角出来たウェディングドールを見せようと思ったんじゃないのか?」   隼汰は徐々に自分のしている事に後ろめたさを感じていく。ついでに顔の赤みも増していく。   そして最後の一撃。   「誰だったっけなぁ?昨日ウェディングドールが完成して、鷹君に一番に見せるって喜んでた人は?」 「…‥なっ!!!」 「しゅ…シュンちゃんっ!!!!」   隼汰の顔がこの上ない赤色に染まった。次の言葉が出てこないようで、魚のように口をぱくぱくさせている。 そんな隼汰の袖を鷹が嬉しそうに引っ張った。   「シュンちゃんっ!!俺の事そんなに大事に想ってくれてたんだねッ」   鷹、この上ない極上の笑顔。   「だったら最初からそう言ってくれれば良かったのにぃ‥……さぁ、シュンちゃんのお部屋に‥ぐばぁッ」   上機嫌だった鷹が、そのテンションのまま床に転がった。理由は明白。隼汰の凄まじい威力を秘める蹴りを喰らったからだ。 そのキレの良さに辰起は思わず拍手を贈る。
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