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「‥…もしかして、心配した?」
「…‥ッ!!」
振り返った勢いのまま鞄を鷹の腹部に投げつける。その直後に蛙が潰されたようなうめき声が聞こえた。
「だれがッ!!お前なんか心配するかッ!!」
「ちょ…‥いくらなんでも、これは…‥」
「お前が変な事言うからだ!!」
「‥…顔赤くして言われても‥‥ぅぐッ」
床でうめいていた鷹のみぞおちに、隼汰の蹴りが一発。拍手を送りたいほど綺麗に入る。
「お前なんかッ」
「ぎゃッ」
蹴り一発。
その後に聞こえる蛙な声。二人はそれを何度か繰り返す。
「死ぬッ死ぬ死ぬッ死ぬって!!」
「‥……お前なんか死ねばいいじゃんか!!!」
「シュンちゃん、それはちょっと酷すぎるッ!!」
「…‥隼汰、それぐらいにしておきなさい」
大きなため息と共に聞こえた声に、二人とも動きを止めて振り返る。そこにはなかば呆れた隼汰の父親、河内辰起(カワウチタツキ)がいた。
「だって、コイツが変な事言うから…‥」
そして再び蹴り一発。自然と聞こえる蛙の鳴き声。
その状態を見て、辰起は深々とため息をつく。
「こらこら、隼汰。そのままでは鷹君が死んでしまうよ?」
「お父様たすけてぇぇ‥」
うっ、と息が詰まったように動きを止める隼汰。その反応が気に入ったのか、辰起は尚も言った。
「それに、今日は鷹君をいじめるために呼んだのか?」
「‥…う。」
「たすけてぇぇ‥…」
「折角出来たウェディングドールを見せようと思ったんじゃないのか?」
隼汰は徐々に自分のしている事に後ろめたさを感じていく。ついでに顔の赤みも増していく。
そして最後の一撃。
「誰だったっけなぁ?昨日ウェディングドールが完成して、鷹君に一番に見せるって喜んでた人は?」
「…‥なっ!!!」
「しゅ…シュンちゃんっ!!!!」
隼汰の顔がこの上ない赤色に染まった。次の言葉が出てこないようで、魚のように口をぱくぱくさせている。
そんな隼汰の袖を鷹が嬉しそうに引っ張った。
「シュンちゃんっ!!俺の事そんなに大事に想ってくれてたんだねッ」
鷹、この上ない極上の笑顔。
「だったら最初からそう言ってくれれば良かったのにぃ‥……さぁ、シュンちゃんのお部屋に‥ぐばぁッ」
上機嫌だった鷹が、そのテンションのまま床に転がった。理由は明白。隼汰の凄まじい威力を秘める蹴りを喰らったからだ。
そのキレの良さに辰起は思わず拍手を贈る。
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