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「お前なんか好きじゃねぇよ!!おおおおお前なんか人形の次だっ人形の次!!!」
そういって隼汰はもう一発鷹に蹴りを喰らわせる。そして悶える鷹を放置し、自分の部屋に行ってしまった。
「シュン‥ちゃ、ん…」
「相変わらずツンデレなんだからっかわいいなぁ‥……」
俺もうダメ…、と言うのがピッタリのように床に突っ伏す鷹。そんな横で我が子の背中を見送り、変態発言をする辰起。どう考えても異様な光景だ。
「まぁ、ツンデレで無くては隼汰ではないな、うん」
「あの、助け」
「ツンデレではない隼汰…‥おぉう!!!それもまた良い!!」
「ちょっと、聞い」
「この気持ちはなんと言ったら‥…あぁ、今流行りの言葉で言う所の萌えと言うやつか!!」
「は??ちょっと、止まっ」
「ツンデレではない隼汰にギザ萌えだ!!」
「人の話を聞けぇぇええッ!!!!!!!」
あまりの叫び声に辰起の動きがピタリと止まる。それと同時に店にあった数体の人形が床に落ちた。
「辰起さん、シュンが居ない所で親バカになるのは止めてください」
「なっ…‥私がいつ親バカになった?!」
「今まさになってたじゃないですかッ!!普通は自分の子供…しかも息子になんてギザ萌えとは言いませんよ…」
「そうなのか?」
「そうなんです、普通はね」
そうなのか、と真剣に考え始める辰起を見て、鷹は気付かれないようにため息をついた。
辰起は、隼汰の前では隼汰本人も憧れるようなしっかりとした父親であり人形師だ。しかし、隼汰が居ないと変態としか言い様が無い極度の親バカになる。それに対する主な被害者は、言うまでも無く鷹だ。
前に会った時には、隼汰が飲み物とお菓子を取りに行った時に、隼汰に似合うであろうロリータ服とその萌え要素について延々と聞かされた。
ここでの一番の問題は、辰起が変態もしくは親バカを自覚していない所だ。
つい先程のように平気で隼汰に対してギザ萌えと口走る。それが母親ならまだ分かる。しかし、辰起はまごうことなき父親だ。
‥…普通は、無いよな。
馬鹿と天才は紙一重と言う言葉があるが、正にそうなのかもしれない。現に辰起は世界的に権威のある人形師だ。
鷹が再びため息をつきながら辰起を見ると、いまだに考えている。仕方ないから助け船を出してあげる。
「とにかく、普通は息子に向かって萌えとは言わないんです。本人の前は気をつけてた方がいいですよ」
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