#1 ウエディングドールと魔術本

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それを聞いた辰起はいきなり大声で笑いだした。   「え??なんで笑うんですか??」 「いやいや、忠告ありがとうね。でも隼汰の前では大丈夫だ」 「は??」 「私は昔に一回だけ大きな失敗をしているんだ」     聞いた事をまとめると、こうだ。   辰起は昔に一回だけ隼汰の前でその変態をフルに発揮してしまった事があった。   その時隼汰の年齢は5歳。まだ男とも女とも区別がつかない体を見ていた時に、インスピレーションが沸いたらしい。 デッサンから始めて、僅か3日間で服を完成させた。そして完成した服を持って隼汰の元へ。 5歳と言っても、もう立派に自分は男だと認識できる年頃。隼汰は勿論着るのを断った。 しかし、そんな事では諦められない辰起は、泣き叫びながら逃げる隼汰を「萌えーッ!!」と叫びながら追いかけた。 逃げるうちに行き止まりに来てしまった隼汰は、泣きながら豹変した父親を見る。 じりじりと狭くなっていく二人の距離。 あと少しで終わりだ!!!と隼汰が目を閉じた時に奇跡は起こった。 いきなり、バタンっと大きな音がした。そっと目を開けた隼汰の目に入ったものは、倒れている辰起だった。 「つったー!足がつったー!!!」と言いながらピクピクしている。 日頃の運動不足に加え、辰起はデスクワークタイプ。つまり体力が無かったのだ。 辰起が動けない事を確認すると、隼汰は女の子顔負けの笑顔で辰起に近付いた。 そして、約2時間ほど強制鬼ごっこのお礼をしたそうだ。 隼汰の繰り出す蹴りの鋭さはここで磨かれたと考えて間違いないだろう。     「いやぁ…あの時は2週間も仕事が出来なくて困ったなぁ…‥」 「あなた、馬鹿でしょ?」   困ったと言うわりには嬉しそうな顔をしている辰起に思わずツッコミ。   「まぁ、とにかく。それでたっぷりお礼をしてもらった私は、隼汰の前では反射的にそうゆう発言をしなくなったんだよ」 「‥……はぁ、ならいいですけどね」   鷹は隼汰の部屋に行こうと立ち上がった。   「あの子も照れているだけだから、気にしないでくれ」 「分かってますよ、それにもう慣れました」 「ならいいんだが…‥」   辰起はそう言いながら、落ちてしまった人形を元に戻していく。人形一体一体に名前を呼び掛け話しかけながら。その光景は何回見ても強烈だ、と鷹は密かに思う。 人形を全て元に戻すと、辰起は少し困った笑顔で言う。
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