絞殺魔くんと、無気力さん。

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田舎。他の人はどんなイメージを抱くのだろう? 唐突にわいた疑問と共に解答を叩き出す。 けっして、のどかだとか、住みやすそうとか、空気が美味しいなんてイメージはたぶん、幻想なんかじゃないかと思う。私は別に田舎に悪いイメージは持っていないけれど、最後の空気が美味しいというのはどういう感覚なのか未だに理解ができていない。 ただ、わかっていることは田舎はのどかでもないし、住みやすそうなんてのは幻想だということだけ、そもそも、人間同士が一緒の場所に住んでいてまったくトラブルが起こらないほうが不気味だし、 のどかなんて表現も単純な見た目だけのだろう。現にそういったことが言われても、都会から田舎に移り住もうという人間は少ない。もしもそういう人間がいるのなら、過疎化や高齢化なんて起きないはずだ。 人間は利便性を求める生き物だ。携帯端末に頼っていれば、字の書き方がうろ覚えになるし、今時、算盤が使えなくても電卓を使えばいい。地図がなくてもスマートフォン一つあれば居場所だって即座にわかってしまう時代だ。 誰が好き好んで田舎なんかに移住するかという話だ。便利な都会に住んでいたいというのは誰もが抱くことだろう。まぁ、そちらもそちらでいろいろあることも事実だ。そして、そのドロッアウト、脱落して田舎に来た私はとんだ変わり者ということになるのか。 原因ははっきりしていない。対人トラブルとか。空気、雰囲気の不一致が強い、もともと我の強いほうであったためその場に溶け込めず、田舎暮らしに変な幻想を抱いてやってきた。バカだ。 田舎に来て最初に感じたのが、どうしよもない疎外感だった。なんでもオープンわけじゃないと思っていたけれど、あきらかによそ者に対する警戒感は身にしみてわかった。二十代前半なのだと思っていたけれど、あとでわかったことだが、挨拶を返さなかったりしたのが原因らしい(わかるかそんなこと)。 子供みたいな理屈と腹をたてることもできたけれど、横の繋がり、仲間意識が強い彼らにしてみれば挨拶もしない奴は部外者らしかった。都会からやってきた得体のしれない奴も手伝っていたかもしれない。まるで、宇宙人と人類だ。 同じ人間同士なのに、どうして、ここまで分かり合えないのかなんて思っても、私から歩み寄ろうしないだけなんだとは、なんとなくだけど、わかってはいた。わかっていても共通の話題なんてない。
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