絞殺魔くんと、無気力さん。

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働いている。けれど、それだけだ。別にこれは『やらないといけない』から、やっているだけで私の『やりたい』ことじゃなかった。ルーチンワークの一つとでも言っていいのかもしれない。呼吸と同じだ。必要だからやっている。 たぶん、それが私にとってはあろうが、なくなろうがどっちでも構わないと思いつつ、たぶん、なくなったら私は本当に空っぽになるだろう。 それが私だ。私という人間だ。若いんだからもっと『やりたいこと』をやれと言うけれど、もっと『目標』に向かって突っ走ろうとしても、やりたいことも、目標も見えない。 疲れている? 枯れている? 単なる無気力かもしれない。それが自分と受け入れられるが、何か変わらないと、という焦りもある。けれど、まったく先が見えない。私はいったい何がしたいんだ? 「…………」 無気力にゴールデンウイークを過ごす私はなんて、価値のない人間なんだろう。こういう時期こそ、趣味なんかに没頭すればいいのに…………何もない。 部屋の隅で膝を抱えていることしかできない私にはやる気というやつが枯渇してる。時間だけが無意味に過ぎていく。チクタクと、時計の針の音が異様に大きく聞こえる。これが心臓の鼓動のようで、もしも止まってしまったら私の人生も止まってしまう? 気がついた時、私は時計を壁に叩きつけていた。 何をしてしなくてはという焦りはある。でも、何をしていいかわからない。 時計が壁にぶつかって落ちても、チクタクという音は消えない。私には時計一つ壊す力もないことに妙に安心感がわいてくる。「はっ、ははっ」と笑いがこぼれた。と、その時、インターホンが鳴った。 翌日、いったい私は何をやっているんだろう? 野球帽を被りに長靴を履いて、バケツとクワ? らしきものを持って浜に来ていた。 自分に問いかける。 潮干狩り、 としか答えが返ってこない。そう、私は潮干狩りに来ているのだ。昨日、インターホンを鳴らした相手は近隣住民(名前は知らない)に潮干狩りに行くんだけれど、一人欠員が出てしまったため、来ないかというもの、つまり、私は人数合わせとして連れてこられたというわけだ。当然のことだけれど、普段から交流が全くない私がとけ込めるわけもなく、一人孤立してしまっていた。 潮干狩りなんて、一度も来たこともないし、やったこともない。他の人達を見よう見まねでやってみたが、五分ほどで飽きた。
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