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「はぁ? それは、それは、残念でしたね。ですけど、僕が絞殺魔さんだと言ったつもりはないんですけどねぇ。どちらの絞殺魔さんなんでしょうか? もしかしたら人違いかもしれませんよ」
と、飄々と絞殺魔は言った。
「私に絞殺魔の知り合いなんていないし、貴方が私を絞殺しようとしたから、そう思っただけ…………」
何をしてるんだろう。というより、
「疲れた。少しだけ休憩………」
と、私は溜め息混じりに言葉をもらした。その場に座り込めないのが辛いし、直射日光で焼け焦げてしまいそうだ。前髪から垂れる汗がうっとうしい。髪、切らないと…………、でも、美容室、行きたくない。美容師と会話が続かないし、他人に髪を切られるってなんだか怖い。
「どうしたの? つーか、いつまでいるの? 自首したいんだったら勝手にすればいいでしょ」
「潮干狩りしません?」
「あ?」
絞殺魔はにこやかに笑いながら言う。コイツはイッタイナニヲイッテルンダ。アタマでもおかしくなったのか。もう、私が暑さでおかしくなりそうだ。
「だから、潮干狩りですよ。潮干狩り。廃業祝いに誰かと潮干狩りしてから自首するんだったら、これくらいしておこうと思いまして、僕一人ではつまらないので一緒にしませんか? ちなみに、ここらへんはあんまり取れませんよ」
さすが潮干狩りの絞殺魔、よく取れるポイントも熟知してるらしかった。おそろしくどうでもいいけれど、私だけ何も取れませんでしたなんて、疎外感は避けたい。
「まぁ、疲れない程度になら」
「もう、疲れてません?」
「じゃあ、そこそこ頑張ってみるで」
「それって結局、頑張らないパターンですよ」
ということで、絞殺魔と潮干狩りが始まった。なんだこれ?
絞殺魔に連れられて、私はよく取れるポイントにやってきた。私からしたらどこでも一緒にしかみえないけど。
「ほら、無気力さん。こちらですよ。こちら」
「無気力さんって、私のこと?」
「他に誰がいるんです?」
「そりゃごもっとも」
二人で、額を突き合わせてゴリゴリ、ゴリゴリと掘っていく。
「…………わー、すごーい」
「まったく、熱意がこもってない、すごーいありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして…………はぁ、疲れた。腰、痛い」
「ははっ、おばさんみたい…………ごふっ!?」
「何か、言った?」
「いえ、なんでも、ナイスなボディーブローです」
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