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「あっつー」
貴文にそんなこと言われなくっても、充分にわかってる。
さっきから、ガンガン日光に照されまくってるから。
「日焼け止め、もっとしっかり塗ってくれば良かった」
ブーブー文句をたれるのはレオ先輩。
車内にも関わらず、大きなつばの帽子とサングラスは怪しいし、邪魔くさい。
「美祢っち、窓閉めてクーラーにしてよ」
「だーめだ。お前ら、実家に帰らないでクーラーに当たりすぎだ。少しは自然を体感しろ」
文句たらたらな生徒会メンバーをものともせず、藤原先生は首筋にクーラータオルを巻いたサングラス姿で運転を続ける。
そんな大人と、到底実子とは思えないバラバラな中学生4人の組み合わせは実に怪しい集団だ。
さっき、早めのお昼に寄ったファミレスで、バイトらしいウェイターのお姉さんは、ものすごく不審そうに注文を受けてくれた。
「ねえねえ、このまま知らない場所に連れて行かれたらどーする?」
後部座席の左に座るレオ先輩が、いきなりこんなネタをぶっ込んでくる。
全く脈絡がない。
「そんなことはないから、どうしようもない」
あっさり打ち切る、助手席の武志先輩。
「美祢っちが迷ったらあるかもよ」
後部座席右の貴文が悪乗りし始めたし。
「カーナビがあるだろ」
武志先輩は、あくまで冷静にツッコミ返す。
「未だに当てにならないって聞くよ。指示通りに進んだらものすごく遠回りだったとか、音声認識でトンでもない場所が表示されるとか」
「迷うなら、やっぱり山の中よね」
「自覚しないで登っちゃってるんでしょ。で、怪しげな洋館があるの」
「いいわね。不気味な執事さんとか、嫌みなおば様とか、がめついおじ様なんかがいたりして」
「もちろん、遺産相続で揉めてるんだよね」
ター様、何がもちろんなんですか。
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