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「何だよ、お前。この前別れたばっかりじゃなかったか?」
いつも不機嫌そうな低音で喋るのは、唐沢鷹雄だ。
185cm以上ある長身は、まるでスポーツ選手みたいに筋肉がガッシリと付いていて、少し松嶋と似ているかもしれない。
短く立てた黒い髪と、鋭く刺すような目は威圧感に満ち溢れていて、初めて会った時はそりゃもうビビったもんだ。
「はあ?俺別に誰もたぶらかしてねぇし。」
広田は怪訝な顔でそう言うと、この会話を提供した圭介をジロリと睨む。
「一昨日、駅前近くで絡まれてる女子高生助けてたろ?
その後名前聞かれたくせに、こいつ名乗る程の事してねーって断ったんだぜ?
漫画みたいな台詞吐きやがって。でもああいうの、女は好きなんだよなぁ。」
圭介の言葉に、思い当たる節があるのか、広田は「あぁ。」と目を丸くしながら頷いた。
「あれ、絶対礼言いに学校来るぞ。
グレー色の制服に黒ラインって珍しいからな、100%学校調べて来る。賭けるか?」
ニヤニヤ笑う圭介は、何とも楽しそうだ。
アクシデントやハプニング、そういったものが大好物だからなコイツ。
「賭けねーよ。つーか、絡まれてるとこ助けただけじゃん。そんなんで惚れたりするか?」
呆れながら言う広田に、圭介はわざとらしく溜息を付く。
「だーからお前はタチ悪ぃんだよ。計算ナシでそういう事やっちまうから、女がホイホイかかるんだな。」
「ゴキブリほいほいみたいに言うなよ。」
広田は思いっ切り不満そうな顔をしていたけど、俺には圭介の言っている事が分かる気がする。
広田は、いつだって自分の思うがままに行動していて。
そして当たり前のように、正しい行動を選ぶ。
そんな人間に、惹かれない奴なんかいないだろ?
広田はいつも、特別だ。
俺にとっても。
その他、大勢にとっても。
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