第三話

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「何だよ、お前。この前別れたばっかりじゃなかったか?」 いつも不機嫌そうな低音で喋るのは、唐沢鷹雄だ。 185cm以上ある長身は、まるでスポーツ選手みたいに筋肉がガッシリと付いていて、少し松嶋と似ているかもしれない。 短く立てた黒い髪と、鋭く刺すような目は威圧感に満ち溢れていて、初めて会った時はそりゃもうビビったもんだ。 「はあ?俺別に誰もたぶらかしてねぇし。」 広田は怪訝な顔でそう言うと、この会話を提供した圭介をジロリと睨む。 「一昨日、駅前近くで絡まれてる女子高生助けてたろ? その後名前聞かれたくせに、こいつ名乗る程の事してねーって断ったんだぜ? 漫画みたいな台詞吐きやがって。でもああいうの、女は好きなんだよなぁ。」 圭介の言葉に、思い当たる節があるのか、広田は「あぁ。」と目を丸くしながら頷いた。 「あれ、絶対礼言いに学校来るぞ。 グレー色の制服に黒ラインって珍しいからな、100%学校調べて来る。賭けるか?」 ニヤニヤ笑う圭介は、何とも楽しそうだ。 アクシデントやハプニング、そういったものが大好物だからなコイツ。 「賭けねーよ。つーか、絡まれてるとこ助けただけじゃん。そんなんで惚れたりするか?」 呆れながら言う広田に、圭介はわざとらしく溜息を付く。 「だーからお前はタチ悪ぃんだよ。計算ナシでそういう事やっちまうから、女がホイホイかかるんだな。」 「ゴキブリほいほいみたいに言うなよ。」 広田は思いっ切り不満そうな顔をしていたけど、俺には圭介の言っている事が分かる気がする。 広田は、いつだって自分の思うがままに行動していて。 そして当たり前のように、正しい行動を選ぶ。 そんな人間に、惹かれない奴なんかいないだろ? 広田はいつも、特別だ。 俺にとっても。 その他、大勢にとっても。
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