第三話

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やっぱり広田は誤魔化せなかったか。 だけど、肩を落としてる場合じゃない。 一番気合いを入れなきゃいけない時だ。 「…やっぱ、バレた?」 「当たり前だろ?お前の事は俺が一番分かってるからな。」 何だよ、ソレ。 ドキッとした俺も、馬鹿じゃねーの。 「………でも、嘘を言ってたわけじゃねぇよ。この間、久々に良太と松嶋と話してさ。 良太にまでちょっと敬遠されてたって知って…正直へこんだわ。」 「良太と松嶋…。」 懐かしい響きに、広田の表情が少しだけ緩む。 良太は同じ学校だというのに、俺も広田も今ではほとんど話す事がなかった。 広田もそれを気していたのか、疑うような眼差しはもうないみたいだ。 「中学の頃はさ、あんなに毎日一緒に遊んでたのに…、何で今はこうなってんだろとか、考えたらさ。 真司達の事は勿論大事だけど、良太達の事も同じように大事にしたい。」 広田への言い訳を、頭の中でシミュレーションしていたのは、事実だ。 だけど。 この気持ちだって、勿論嘘じゃない。 三人で遊んだあの日、昔に戻ったみたいですごく楽しかったから。 やっぱりあいつらも、俺にとって大事な存在なんだって、改めて思ったんだ。 ………松嶋のカミングアウトには、心底ビックリしたけどな。 「………そ、か。うん。そうだな。」 何かを納得したように、広田が何度か頷く。 そして、真っ直ぐに俺の目を見た。 「次集まる時、俺も呼べよな。」 にこ、と。 広田の表情が和らいで。 俺の一番好きな顔で、広田は微笑んだ。 あぁ。 すっげー、好きだ。 「……実はさ、ちょっと心配してた。」 少し遠慮がちに言う広田に、胸の奥が少しだけ騒ぎ始める。 聞きたくない事を、言われるような気がして。 「つか、今も実は心配してる。………お前さ、最近おかしくね?」 「………………。」 いつかは。 聞かれる時が、来ると思っていた。 けど。
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