第四話

3/11
4616人が本棚に入れています
本棚に追加
/440ページ
「見たかよ、ほら!俺の言った通りだろ!」 嬉しそうな圭介の声が、教室に響いた。 周りの生徒が、何事かと遠慮がちに覗く中、俺も不思議に思い圭介を見る。 「何が?」 「見ろよ、恭平!正門のとこ、女がいるだろ?」 言われて窓から覗き込むと、確かに女子高生が一人、門の横に立っていた。 遠目からでも何となく分かる、可愛い感じの女だ。 「あれだよ、あれ!広田が助けてやった女!俺の記憶力に間違いはない。」 「ーーーー………。」 自信満々、嬉しそうに言う圭介の声が、遠くから響いて来るようだった。 あぁ。 本当に、きたのか。 ぼんやりとそんな事を考えながら、女をじっと見つめる。 前の彼女と別れてから、三ヶ月。 そろそろ新しい彼女が欲しくなってる頃だ。 「広田に言って来よーっと。お前も来るだろ?」 「……いや。俺は、いい。」 「そか?んじゃ、おっさき~。」 これから始まる出来事に、お祭り感覚でいる圭介。 きっと、賭けてりゃよかったって思ってんだろうな。 他人事のようにボーッとと考えながら、再び視線を女へ移した。 付き合うんだろうか。 いや、可愛けりゃ付き合うよな。 そうなったら…… また、紹介されるのか。 一番の親友だって。 そして、微笑み合う二人を、必死に作った笑顔で見届けるのか。 「ーーーーーーーーー、」 ガンッ!!! 無意識に出た右足が、気が付けば自分の机を蹴り飛ばしていた。 いきなりの出来事に、教室にいた生徒達が顔を強張らせてこちらを見ている。 息を飲み、俺に恐怖を感じて。 あぁ。 これじゃあ、友達の輪計画も、台無しだな。 なんて。 頭の片隅で考えながら、鞄を手に取り教室を後にした。 感情が、コントロール出来ない。 何かに押し潰されそうで、怖い。 どうしたらいいのか、分からねぇんだ。
/440ページ

最初のコメントを投稿しよう!