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「見たかよ、ほら!俺の言った通りだろ!」
嬉しそうな圭介の声が、教室に響いた。
周りの生徒が、何事かと遠慮がちに覗く中、俺も不思議に思い圭介を見る。
「何が?」
「見ろよ、恭平!正門のとこ、女がいるだろ?」
言われて窓から覗き込むと、確かに女子高生が一人、門の横に立っていた。
遠目からでも何となく分かる、可愛い感じの女だ。
「あれだよ、あれ!広田が助けてやった女!俺の記憶力に間違いはない。」
「ーーーー………。」
自信満々、嬉しそうに言う圭介の声が、遠くから響いて来るようだった。
あぁ。
本当に、きたのか。
ぼんやりとそんな事を考えながら、女をじっと見つめる。
前の彼女と別れてから、三ヶ月。
そろそろ新しい彼女が欲しくなってる頃だ。
「広田に言って来よーっと。お前も来るだろ?」
「……いや。俺は、いい。」
「そか?んじゃ、おっさき~。」
これから始まる出来事に、お祭り感覚でいる圭介。
きっと、賭けてりゃよかったって思ってんだろうな。
他人事のようにボーッとと考えながら、再び視線を女へ移した。
付き合うんだろうか。
いや、可愛けりゃ付き合うよな。
そうなったら……
また、紹介されるのか。
一番の親友だって。
そして、微笑み合う二人を、必死に作った笑顔で見届けるのか。
「ーーーーーーーーー、」
ガンッ!!!
無意識に出た右足が、気が付けば自分の机を蹴り飛ばしていた。
いきなりの出来事に、教室にいた生徒達が顔を強張らせてこちらを見ている。
息を飲み、俺に恐怖を感じて。
あぁ。
これじゃあ、友達の輪計画も、台無しだな。
なんて。
頭の片隅で考えながら、鞄を手に取り教室を後にした。
感情が、コントロール出来ない。
何かに押し潰されそうで、怖い。
どうしたらいいのか、分からねぇんだ。
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