一章

8/9
前へ
/27ページ
次へ
「嫌なことあったんだろ? だから、あんなに泣いてたんだろ? だったら、お返しに殴ってやれ」 なんでそんなに分かるの。 私、あなたに何も言ってないのに。 「…ありがと」 「行くぞ」 お礼の言葉は無視されたけど、それはきっと梶野くんの照れだと思いたいな。 当たり前だけど、もう凌は家に帰っていて、私の部屋は真っ暗だった。 『鍵ポストに入れといたから』 玄関にそんな張り紙があって、相変わらず几帳面な凌だ。 その鍵で開けて、部屋に上がる。 こんな時間に部屋に居るのなんて、久しぶり。 いつも、夕飯も凌の家でご馳走になってたから。 「…あ」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加