二章

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「おはよ。なんかワケアリの予感ね」 親友の瞳が座っていた。 「…そんなとこ」 はぁ、ともう一度ため息ついて、私は授業の準備を始めた。 極力凌から遠い位置に座り、肘や教科書、消しゴムのカス一つさえ自分の机から出ないように気を配りながら、なんとか午前中の授業を乗り切った。 「凌」 不意に、教室の前の扉から、聞こえる声。 自分以外に凌のことを呼び捨てで呼ぶ女の子なんて、私は一人しか知らない。 「百合那」 凌の、カノジョ。 そのカノジョの手に数学の参考書が見えて、私は瞳を見やる。 「購買に、デザート買いに行こう」 瞳が頷いたので、私は静かに席を立った。 「ホントに良いの? 毎回毎回」 教室を出てから、瞳が眉を下げて聞く。 「良いんだよ、別に」 少しだけ軋む胸を押さえて、早足に歩く。
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