一章

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そして、ふふっと笑う。 「ブサイク」 「な!! ひどいよそれ! 今傷ついたからね!! ガラスのハートが!」 「そんなハートどこにあんだよ。高木の場合、毛でも生えてそうな図太い心臓してるくせに」 「梶野くんに言われたくないし!」 しばらく2人で言い合って、また吹き出す。 「ここは星も見えねぇな」 夜空を見上げ、梶野くんが呟いた。 「真っ暗だし、誰もいないし。 …だから、泣けば?」 え、と言った言葉は声にならなかったかもしれない。 せっかくおさまった涙は、またぶり返してきて、私はみっともなく鼻を啜りながらしゃくりあげた。 「たまには吐き出してもいいんじゃね?」 決して優しいわけじゃない、そのぶっきらぼうな口調が、イマはとてもありがたかった。 「帰るぞ」 しばらく泣き止むのを待ってくれてから、世間話なんかして、時間を潰していた。 時計をちらりと見て、顔をしかめ立ち上がる梶野くん。 「帰りたくないな…」 帰ったら、明日の朝には嫌でも凌の顔を見なきゃいけない。 だって、隣にいるから。
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