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走れば走る程強くなっていく臭いのおかげで、原因を見つけるのにそう時間はかからなかった。
「………」
静かに息をととのえながら『それ』の傍らにしゃがみ込む土方。
そんな土方を見て沖田が口を開く。
「……辻斬り…ですかィ…?」
「あぁ…恐らくな。今までと同様、頸動脈をやられてる。遺体の具合から見てそう時間は経ってねェな…」
「じゃあ、まだ辻斬りのヤローが付近に居るかもしれやせんねィ…」
沖田の言葉に土方は静かに頷く。
「あぁ…至急屯所に連絡だ。近辺に怪しい奴が居ねぇか探すぞ」
「わかりやした」
そう言うと、沖田は屯所に電話を掛け、新たに辻斬りがあったこと、近辺にまだ犯人が居るかもしれない事などを素早く、手短に説明していく。
(チッ…ふざけやがって……)
心中穏やかでない土方が顔をしかめる。
(絶対ェにとっ捕まえて牢にぶち込んでやる……)
そう決意する土方の瞳は、見えない敵に向けられた刃のように、闇に鋭く光った。
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