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「こっちも色々と忙しいんだよ。ってかテメーがくたばれ総悟」
沖田の言葉に負けじと言い返す黒髪の男の名は土方十四郎。
真撰組の副局長であり、真撰組の頭脳と言われている。
そして、相手に容赦のない…まるで鬼のようなところから、鬼の副長と呼ばれ恐れられている。
「で…そいつが被害者か?」
布が被せてある何かを顎で示し土方が言う。
「えぇ。酷い有り様ですぜィ。頸動脈をざっくりやられてまさァ…」
土方は沖田の言葉を聞きながら『それ』に近付く。
「死因は失血死でしょうねィ。傷口を見る限り、相手は相当な手練れでしょう…しかも、なんの躊躇いもなく一太刀でってところでさァ」
『それ』の傍までくると土方はしゃがみ込み、布をそっと捲り中を見る。
「辻斬り……か…」
捲った時と同様、そっと布を元に戻すと、土方は立ち上がった。
「すぐに捜査だ。聞き込みでも何でもして怪しい奴を徹底的にあぶり出せ」
沖田にそう言うと、背を向け歩き出す。
「土方さんはどうするんでィ?」
「俺は一度屯所に戻る。近藤さんにも報告しねぇといけねーしな」
そう言うと、土方はもと来た道を戻って行った。
「ったく、あぶり出せって簡単に言いやがる…命令すんじゃねぇ…自分でやれ土方コノヤロー」
土方が去って行った道にボソリと文句を言う沖田。
「仕方ねぇ…山崎にでもやらせるか…」
言いながら沖田も路地裏を後にする。
この事件がこれから起こる、事の始まりだったのかもしれない…
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