私と君と、俺

8/9

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「部長。恥ずかしいですけど言いますね?私きっと、部長の事好きです、大好きです。 もしかしたら、頼りになるからって甘えてるだけかもですけど……でも、きっと、大好きです」  ははっと、笑い声が口から漏れた。卑怯だろうが、今言うなんて。こいつは遊びなれてやがる。 「……書類、良い出来だった」 「部長の指導のお陰です」 「……あれ、不味かったなぁ」 「びっくりするくらいマズかったですね」 「……俺さぁ……どうすりゃ良いかなぁ……」  矜持も何も、無かった。仕事だけ、仕事だけで生きてきて、行き詰まったまま動けない俺には何も無かったんだよ……笑ってやってくれ……。  一回り近く歳の離れた君に、甘えちまうなんてさ。 「私には社会とか、会社の事は分かりません」  はは、きっぱりと言ってくれる。 「ですけど、人間の事はたっぷり学校で学んできました。 部長は、信じる事から始めるべきです。任せる事から始めるべきです。全部自分がって思うから大変なんじゃないですかね? あ、いや、偉そうにすみません……何も出来ないのに……思うだけかよって感じですよね……」  ホント、きっぱり言ってくれるよ……甘いなぁ……こいつは甘いよ。だから俺がしっかり育ててやんないとか? 「なぁ」 「はい?」 「片付けんの手伝ってくれ、教えっから」 「あ……はいっ!」 「終わったら飲み行くぞ?二人っきりで、な?」 「……あ、え、は、はいっ!」  ガキが背伸びしやがって、俺に説教なんて十年早い。その内付き合いきれなくなって根を上げるに決まってるさ。そしたら……いや……。 「あぁ、それと。彼氏は居るのか?」 「いえ!居ませんっ!……はぇ?」 「なら、俺と付き合う事考えといてくれ。片手間で悪いな」  俺は何年振りか。シャツのボタンを外して、タイを緩めながら君にそう告げた。  1ヶ月かそこらで、部長様に生意気言いやがるんだ。こいつはデカくなる、そんでもってイイ女だ。忘れてた俺自身を思い出させてくれるくらいに。 「部長!目ぇ怖いです!目っ!」 「うるせぇ、明日からコレで行くからな。益々スパルタで行くから覚悟しとけ?」 「ま、マジですかっ!?」 「冗談だ、お前以外はな?」 「は?え?えぇぇぇ!?」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加