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「部長。恥ずかしいですけど言いますね?私きっと、部長の事好きです、大好きです。
もしかしたら、頼りになるからって甘えてるだけかもですけど……でも、きっと、大好きです」
ははっと、笑い声が口から漏れた。卑怯だろうが、今言うなんて。こいつは遊びなれてやがる。
「……書類、良い出来だった」
「部長の指導のお陰です」
「……あれ、不味かったなぁ」
「びっくりするくらいマズかったですね」
「……俺さぁ……どうすりゃ良いかなぁ……」
矜持も何も、無かった。仕事だけ、仕事だけで生きてきて、行き詰まったまま動けない俺には何も無かったんだよ……笑ってやってくれ……。
一回り近く歳の離れた君に、甘えちまうなんてさ。
「私には社会とか、会社の事は分かりません」
はは、きっぱりと言ってくれる。
「ですけど、人間の事はたっぷり学校で学んできました。
部長は、信じる事から始めるべきです。任せる事から始めるべきです。全部自分がって思うから大変なんじゃないですかね?
あ、いや、偉そうにすみません……何も出来ないのに……思うだけかよって感じですよね……」
ホント、きっぱり言ってくれるよ……甘いなぁ……こいつは甘いよ。だから俺がしっかり育ててやんないとか?
「なぁ」
「はい?」
「片付けんの手伝ってくれ、教えっから」
「あ……はいっ!」
「終わったら飲み行くぞ?二人っきりで、な?」
「……あ、え、は、はいっ!」
ガキが背伸びしやがって、俺に説教なんて十年早い。その内付き合いきれなくなって根を上げるに決まってるさ。そしたら……いや……。
「あぁ、それと。彼氏は居るのか?」
「いえ!居ませんっ!……はぇ?」
「なら、俺と付き合う事考えといてくれ。片手間で悪いな」
俺は何年振りか。シャツのボタンを外して、タイを緩めながら君にそう告げた。
1ヶ月かそこらで、部長様に生意気言いやがるんだ。こいつはデカくなる、そんでもってイイ女だ。忘れてた俺自身を思い出させてくれるくらいに。
「部長!目ぇ怖いです!目っ!」
「うるせぇ、明日からコレで行くからな。益々スパルタで行くから覚悟しとけ?」
「ま、マジですかっ!?」
「冗談だ、お前以外はな?」
「は?え?えぇぇぇ!?」
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