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最後はこちらでございます。
虚しさの紫色でございます。きつい刺激で思わず涙が出て参ります。泣きたい時に最適でございます。
どうやらお決まりになった様子でございます。
お客さまの色がはっきりなさってございます。
そっと、お尋ねしてみます。
「お決まりになりましたか?」
お客さまは静かに言葉を出されました。
「これ下さい」
お客さまの選んだ色は、虚しさの紫色でございました。
わたくしの観測通りでございました。
わたくしは、隠し扉の中にいるバーテンダーにカクテルの色を伝えます。
お客さまの前に、美しい紫色のカクテルがバーテンダーがいる扉の中から出されました。
お客さまは出されたグラスを静かに口に運んでおられます。
お客さまがグラスの中身を身体に取り込むのが検出されました。
するとお客さまの伏せた顔の辺りから水分が検出されました。
どうやら声を殺してお泣きになっているようでございます。
わたくしは自分の存在価値をゼロにしてさしあげました。
わたくしの気配がなくなるとお客様は押し殺した嗚咽を漏らされました。
お客様から水分が検出されました。どうやら上手くいったようです。
お客様はしばらくそのままだったので、わたくしも自分の存在価値をゼロのままにしてさしあげてございます。
水分が検出されなくなってからしばらくたちました。
お客様は先ほどとはうって変わって明るい色でお支払いしていただきました。
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