第1章

12/29
前へ
/29ページ
次へ
よく眠れずに朝を迎えた。 未来も旦那もまだ起きない。 布団の中で基礎体温計を口に加えながら、カーテンの隙間から漏れる朝陽に目を細める。 ピピピ、ピピピ、ピピピ 体温をはかり終えた合図で数字を確認する。 35度3分。 忘れないうちにグラフへ書き込んだ。 今日は排卵日の可能性が高い。 布団から出てキッチンでお湯を沸かしながら考えた。 妊娠したい。 どうしても。 どうか、妊娠しますように。 今日が排卵日でありますように。 しばらくして旦那が起きてきた。 「おはよう」 「おはよう… 今夜、早い?」 「多分。なぜ?」 「排卵日だから… お願い」 「あぁ、わかった。なるべく早く帰るから」 「ありがとう」 朝の情報番組が暗いニュースを伝えているが、悲壮感はまったく無い。 焼きたてのパンの香りが部屋に広がる。 どこにでもある朝の一場面。 幸せそうな家庭。 寝室から未来のご機嫌なお喋りが聞こえてきた。 旦那に抱かれながら寝室から出てくる。 同じ顔で私を見て笑っている。 朝陽に当たる髪の色も同じだ。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加