第1章

3/29
前へ
/29ページ
次へ
古い住宅街の隅。 (こんな所に…) 小さな十字架を屋根に乗せ、ひっそりと佇む教会を見つけた。 人の気配がない。 自転車を置き、教会のドアを開けた。 小さな礼拝堂。 「すみません!」 声を掛けたが返事はない。 厳かな空気に怖じけづきながらも、中の様子を伺う。 暗がりの礼拝堂が一瞬明るくなる。 驚いて振り向くと、中年の男性が教会へ入ってくる所だった。 不思議そうに私を見る。 「スミマセン、今日ここで行われる… えっと… 断酒会に…」 男性は、少し考えてから思い出したように笑った。 「ソーシャルワーカーさんから聞いてます。 どうぞ。 二階でやりますから」 私は、二階へと向かう男性の後に続いた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加