第1章

8/29
前へ
/29ページ
次へ
旦那がお風呂に入っている間の儀式。 こっそり盗み見る 財布の中。 スーツのポケットの中。 携帯の履歴。 旦那は、いつも無防備にそれらを放置する。 見られてやましい事など、一つもないと、 それらは 主張しているようだ。 馬鹿馬鹿しくて 笑えてくる。 震える手。 罪の意識は、当の昔にゴミ箱の中だ。 それなのに、震える。 不幸の種がまた手のひらで芽を出すから。 その芽を摘み取る事が出来ないもどかしさと、 恐怖と、 僅かな 希望。 手が震える。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加