Nameless song

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歌が好きだった。 彼女の歌う、名も知らない曲が。 「……それ、いつも歌ってるね」 乱れた後の気だるい空気の中で、歌いながら着衣を整える背中に声を掛ける。 するとアンは、鈴を鳴らすような軽快な笑い声と共に振り向き、はにかんだ笑顔をこぼした。 「あたしも知らないの。 小さい頃に聴いた憶えがあるだけ」 「僕はアンが歌うのしか、聴いた憶えなんてないんだけどな。 不思議だね」
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