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野ざらしのベンチに近寄る人はいなくて、不釣り合い感がいっそう強くなりました。髪がじっとり重くなって、冷たさが広がります。クスクス、クスクス。笑い声は、現実なのか、幻聴なのか。
「吉岡さん?」
思わず掛けられた声に振り向くと、見覚えのある男子。名前は、解りません。ええっと、と曖昧に返事したのを、彼はあまり気にとめていないようでした。
「制服じゃないから、解らないかな。
永井です、同じクラスの。」
「……ああ、そうそう、永井くんだ。
どうしたの、こんなところで。」
彼は、少し困ったような顔をしています。気に障るようなこと、言ったつもりはないのに。
「いや、まあ、受験勉強、かな。
そういう吉岡さんは、どうしてここに?」
彼は言ったあとで、しまった、というように顔をゆがめました。多分どうやら、私の表情が曇ったようです。
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