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レンは僕が無言のわけを
怒っているからだと受け取ったのだ。
「いいや、ごめん。そんなつもりじゃ」
僕は不安げにこちらを見つめ続ける人形のような少年に
心から微笑んで見せる。
「ひとつずつ聞くよ、ゆっくりと」
レンはホッとした顔つきで
再びコンテを動かし始めた。
「なんだか催促したみたい」
「何?」
「僕の事を聞いてほしいと――」
意味深に囁くと
物欲しげに桜色の唇を舐める。
その表情
ずっと見ていたかったけれど
「――考えすぎさ」
違和感を抱かないあたりで
僕はそっと目をそらすと言った。
「それじゃ何から聞こう?」
あくまでいい兄貴の顔をして――。
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