捩花 第1章

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「……分かった」 私が一番悪いのに、 言いたいことは涙に濡れて 全てを伝えることが出来なかった。 なのに彼は、何も聞かずに ほんの少し俯いたままそう言った。 私にはそれさえ辛くて、 「俊が悪いんじゃないからね!」 何度も何度も告げた。 通りすがりのおばさんも 学校帰りの少年も、 みんな私達を横目に見ていく。 「大好きだったよ!でもなんかダメなの……!嫌いになる前に、離れたい……ほんとにごめん」 何分も何十分も泣きながら伝えていた気がする。 「……他に好きな奴が出来たとかじゃないんでしょ?」 寂しそうな横顔が呟いた。 「そうじゃない!絶対に違うよ」 予想外の言葉に驚き、身振り手振りで説明した。 「だったら良いよ。もう遅いし、今日は帰ろう。もう分かったから」 その言葉に辺りを見回すと、 辺りはすでに真っ暗になっていた。 「また連絡する。恵美の部屋に置いてある荷物とか、取りに行かなきゃだし」 「うん、連絡待ってる……。あのさ」 「何?」 言いづらそうな私の表情に気がつき、俊は優しく聞いてくれる。 そういうところが好きだったなんて、自分で過去形にして悲しくなった。 「学校でも、また話してくれる?」 不安気にそう告げると、俊はびっくりした顔をしながら 「当たり前だろ?なに、俺ら友だちでもいられなくなっちゃうの?」 そう笑った。 ずるい事をしているとも分かって、 俊はそう言ってくれるのも分かってて、私は聞いた。 「ううん、それ聞いて安心した!明日からも、友達ね!」 もう戻れない事も分かっていて、 私達は手を振って別れた。
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