第1章

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うまく言葉が紡げなくて、ただ頷いた。 そんな私の髪の毛を黙って撫でる先生。 消毒の匂いの奥から、先生の香りを見つけてやっと、少し心臓が落ち着きを取り戻し始めた。   ゆっくりと体が離され、ベッド上の小さな隙間をトントンと叩く先生。 遠慮がちにそこに腰をかけて先生に体を向ける。 右手が優しく、私の前髪をかき分け頬を撫でた。 点滴の入ったままの手の甲が痛々しくて、そこに自分の手を添えることを躊躇した。 「………痛みますか?」 「薬効いてるから平気」 切れたら、痛いんだろうな……。 申し訳なさが胸に刺さる。 「いいんだよ、怪我は。 時間が経つにつれ治っていくんだから。 お前が無事だった。 それで充分」 ゆっくり、先生の手が私の顎に添えられ唇をなぞる。 「留守電聞いて………何かあったらって、気が気じゃなかった。 やっと見つけたのに、守ってやれなくて」 違う、の言葉の代わりに激しく首を横に振った。 「このまま目ェ醒まさなかったらって、怖くて仕方なかった。 ガラにもなく生まれて初めて、神頼みしたし………」 切なげに揺れる琥珀色の瞳に胸が締め付けられる。 「ホント、言うこと聞かない子デスネ。 諦めなさいって言ったのに。 アンタが休みなく俺のことひっかきまわしてくれるから……… アンタの名前呼ぶの、口癖になったデショ」 ふは、息を吐くように落とされた、 甘くて、湿度の高い微かな笑みに 脳がビリビリと痺れる。
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