第1章

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「辛いことのほうが、多いぞ」 少し目を伏せて、視線をずらす先生の長いまつげをぼんやりと見つめる。 「できないことのだらけだ。 人前で正々堂々語れる相手じゃないし 、学校では特に距離置かなくちゃいけなくなる。 俺、部活あるから休みもほとんどない。 ………フツーの高校生が経験できることの半分以上はさせてやれない。 俺といるってことは、そういうことだから」 「…………」 「………すぐに、ただの生徒に戻ると思ってたのにネェ。 樹じゃないけど、まさか俺がこーなると」 心底参った、という風に眉間にしわを寄せて笑うけれど、その瞳があまりにも穏やかで。 胸の奥から大きな波になって、愛しさがこみ上げてくる。 「前も言ったけど……… 覚悟、できてンノ?」 口を開いたら、想いが全部こぼれ落ちそうで一瞬、間があいてしまった。 そんな私に先生は、ふは、と口角を上げて微笑みかける。 「ーーーー覚悟できてんなら、 エンリョなく、もらうケド?」
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