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ニヤリ、不敵に口角を上げる先生の瞳は、真剣な光を帯びて鋭いのに………
その奥に映された私が、艶めかしくて。
ドッーーーーーー。
心臓が今までにない刺激に、激しく騒ぎ立てる。
「アンタのこれから先の『全部』、
俺のだ」
ぐ、と強い力で顎を上に掴まれる。
その反動でだらしなく半開きになる私の口元に、先生がゴクリ。
唾を呑む喉仏が震えた。
その様子にゾワゾワとお腹から逆流する甘味に、全身が襲われる。
「俺をこんな風にした責任取って、俺にもらわれろ」
「上から目線………」
目の奥が熱くて、視界が緩む。
本当は嬉しくて仕方ないのに、つい、憎まれ口をたたいてしまう。
「はっ、そんなの今更でショ?
………で、どーすんの?
みすみす逃がす気もないけどネ」
口調はいつもの強気な先生だけど。
お菓子をほしがる子供のように、私を待つ先生の瞳がとても綺麗で柔らかくて。
それだけで、もう、なにもいらないと思った。
「………喜んで」
そう微笑みかけると同時に、こらえきれない涙が頬を伝う。
その雫を親指で拭いながら先生もはは、と小さく笑った。
「なんだ、ソレ。
居酒屋か」
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