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先生が私の後頭部をそっと捕まえて、おでこをこつり、合わせた。
眼前に広がる先生の瞳をのぞき込むと、甘くて艶やかで、心臓が、ト、と音を立てる。
「そう、居酒屋だから……返品不可ですよ?」
「ククッ、望むところデス」
そう無邪気に笑って。
ふ、と真顔になったのを合図に重なる唇。
触れるだけですぐに離れたけれど、空気ひとつ分しか隙間がなくて。
先生の呼吸の動きまでもがダイレクトに伝わるから、逆に艶めかしくて脳がジンジンと疼く。
「ヤバい………クセになりそう」
「んっ…………」
数回ついばんだあと、先生の息の湿度が上がる。
吐息をもらすことも許されない熱に、すぐに頭が機能することをあきらめた。
心が求めるまま、先生に溶けていく。
舌を絡め取り、歯列をざらりとなで上げて私も知らない隙間までをも埋め尽くす先生に、息が上がる。
「っ………はぁっ、まっ……て」
「ダメ。
………食べ残しは、主義じゃない」
あ、と言う間もなく強くかき抱かれながら、再び波に飲み込まれる。
溺れないよう必死にしがみつくけれど、力をなくした身体は、本当に自分ものなのかも分からなくなっていた。
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