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『やっと………帰ってきたわ』
時息のように漏らした笑みの端が、揺れる。
『航大で間違いないって連絡受けた日………終わった、て思った。
私も彼のところに行かなきゃ、って』
静かに伝わる、悠花さんの悲鳴。
『お酒と睡眠薬たくさん飲んで………意識が朦朧としたとき、浮かんだのは航大でも恭一くんでもなく
あなただったのよ』
涙をこらえようと息を詰めていた私は、まともに返事さえできないけれど、悠花さんもそれを求めていないかのように、話を続ける。
『あなたが私を見つめてた。
あの日の強い眼差しで。
そしたらね、”あ、私死ねないんだった”って、思ったの。
”私もそっちに連れてって”ってあなたに手を伸ばした』
「手を………」
『そう………。
だから電話しちゃったのかな』
「………」
『恭一くんにも、喚きながら電話してたみたいでね、記憶にないんだけど』
気まずそうに笑って、言葉をつなげる悠花さん。
『恭一くんの顔見たら、もーどーでもよくなって、当たり散らして暴れまわって………。
なのに怒りもせず、止めもせず、ただ哀しそうな顔してじ、と私の好きなようにさせてくれる恭一くんにも、イライラしはじめる始末よ。
わがままでしょう?自分でも笑える』
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