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慌ててゴシゴシと目をこすって頭を下げた。
「は、初めまして。羽村郁です」
ぐず、と鳴る鼻が恥ずかしくて顔が上げられない。
そんな私にクスクスと笑みを漏らすお姉さん。
「もー可愛いなぁ!郁、ちゃん。
ホントに大丈夫だから、もう泣かないで?」
肩をたたかれて顔を上げると、ふわり、笑った。
そっか………。
さっきから感じていた不思議な親近感。
お姉さんは、先生によく似てる。
涼しげな目元とすっと通った鼻筋。
間近で見ると、本当に凛とした美人さんだ。
「私も仕事しながら見てたけど、こんなの怪我のうちにはいらないから!」
「え?」
「私、ここのオペ室勤務の看護師なの」
「ええっ!?」
そんな偶然あるのかと、思わず驚きの声を上げてしまった。
「まさか、緊急オペで運ばれてきたのが弟なんてねぇ。
ちっとも顔出さないから死んでるのかと思ってたら、微妙な怪我で生存宣言ですか?」
「………ここに運ばれた時点で嫌な予感してマシタ」
「あら、そう。
ま、別に私はどっちでもいいのよ。
あんたが生きてようと死んでようと」
「……ホント、相変わらず口がたつな」
ふぅ、と心底嫌そうな顔で眉間にしわを寄せる先生は、いつもの先生なのに。
お姉さんの前では無防備というか、ちょっと子供っぽくて可愛いな、なんて思ってしまった。
「でも………」
お姉さんが私の頬をふわりと包み込むと。
ーーーーーちゅ。
おでこに柔らかな唇が当てられた。
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