第1章

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慌ててゴシゴシと目をこすって頭を下げた。 「は、初めまして。羽村郁です」 ぐず、と鳴る鼻が恥ずかしくて顔が上げられない。 そんな私にクスクスと笑みを漏らすお姉さん。 「もー可愛いなぁ!郁、ちゃん。 ホントに大丈夫だから、もう泣かないで?」 肩をたたかれて顔を上げると、ふわり、笑った。 そっか………。 さっきから感じていた不思議な親近感。 お姉さんは、先生によく似てる。 涼しげな目元とすっと通った鼻筋。 間近で見ると、本当に凛とした美人さんだ。 「私も仕事しながら見てたけど、こんなの怪我のうちにはいらないから!」 「え?」 「私、ここのオペ室勤務の看護師なの」 「ええっ!?」 そんな偶然あるのかと、思わず驚きの声を上げてしまった。 「まさか、緊急オペで運ばれてきたのが弟なんてねぇ。 ちっとも顔出さないから死んでるのかと思ってたら、微妙な怪我で生存宣言ですか?」 「………ここに運ばれた時点で嫌な予感してマシタ」 「あら、そう。 ま、別に私はどっちでもいいのよ。 あんたが生きてようと死んでようと」 「……ホント、相変わらず口がたつな」 ふぅ、と心底嫌そうな顔で眉間にしわを寄せる先生は、いつもの先生なのに。 お姉さんの前では無防備というか、ちょっと子供っぽくて可愛いな、なんて思ってしまった。 「でも………」 お姉さんが私の頬をふわりと包み込むと。 ーーーーーちゅ。 おでこに柔らかな唇が当てられた。
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