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最北に位置するこの桜鶴城は、活気に満ち溢れていた。
周りの小さな勢力を全て支配下に置き、そして逆らう者には有無を言わせずに全て捕らえ、終いには亡き者としてしまった。
三十半ばの城主である劉義は、今のこの状況に満足していた。
二人の息子には跡を継がせる準備も出来ているし、これからは心配事も少なく、自由気ままに過ごそうかと考えている。
二人の息子達はもう丈夫に育って、今は早く戦に出られるよう体を鍛えさせている。
なによりも可愛い息子達だ。
自分がこうして広大な領地を得られたのは彼等の存在があったからだ。
劉義は髭の生えた顎に皺のある手をやりながらぼんやりとそんなことを考え、ふと目下に目をやる。
綺麗な桜の海。
昔からこの地には野生の桜が生い茂っている。
桜家、と呼ばれる自分達にとってふさわしい地ではあるが、少し邪魔くさい。
劉義には自然を愛するという概念が皆無に等しい。
みなこの桜達を美しいと言うが、自分にとってはただの花のついた樹、にしか見られないのだ。
近い内、城内の桜を全て伐採してしまおうか。
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