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「畜生! またもやられてしまった!」
上流階級の家に属する執事は、これまで受けてきた数々の罠に苦しめられてきた。
だが、以前、当主にきつく言いつけられたのでこれ以上ヤツの思うままにさせるわけにはいかない。
そう決意していたのに、今日、またしてもやられてしまったのだ。
「甲冑に花瓶の花、絵画に生クリーム、エントランスの絨毯に見えないようバナナの皮……ネタはいつ切れるというのじゃ……」
犯行現場を直視して立ち尽くしていると、執事の指示で犯人捜索をしていた使用人達が続々と報告しにやってきた。
どれも犯人発見に繋がる情報はなく、このままではまたしても当主に叱られ、最悪暇を出されるかもしれない。
当主は丁度隣国に交易の件で出向いているので、この間に何とかしなければーー勤続数十年にして崖っぷちに立たされている執事は、自慢の白髪の髭をいじりながら思案する。
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