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「こちらへは、ご結婚か何かで?」
一番、聞かれたくない質問。
でも、わざとらしく聞いているようにも思えた。
「あっ…はい…」
私は渋々答えた。
「新婚さんなのに、こんな壁の薄いアパートを選ぶだなんて」
と、鼻で少しだけバカにしたように笑われた。
実は、このアパートを探し出して、選んだのも、この私なのだ。
2階の角部屋を探して、やっと見つけた賃貸物件だった。
騒音のない静かな暮らしがしたくて。
軽量鉄骨で、木造建てではない部屋をあえて探して、見つけた賃貸物件。
私は、言い返した。
「でもこのアパート、重量鉄骨の建物ですよ?」
と、言い掛けて、すぐに遮られた。
「いや、重量鉄骨でも、この家相当響きますよ。だから、実は重量だと偽って、木造建てなんじゃないかなぁって、僕はかなり疑ってますよ」
男はまた、意味有り気な笑みを浮かべながら、そして間を置いて言った。
「ちなみに僕、奥さんの真下の101号室の者ですけどね」
けどねって…。
もしかして今のは、遠回しにうるさいって意味なの?
変な人…。
さっきから何が言いたいのかしら。
ハッキリ言ってくれたら良いのに。
それに、偽ってるだとか、疑ってるだとか。
相当響きますよと散々言っておいて、最後に、私の部屋の真下に住む者だと言われたら。
イヤミにしか聞こえないじゃない。
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