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だが。
1ヶ月を過ぎても彼氏は更に、仕事に没頭している。
まるでもう、私の事すら頭にない。
心配した私が言葉を掛けても、配慮すらもない片言の返事をする。
この人の大切なモノって一体何なのだろう。
疑問というのか、不審に思えてきていた。
私は、仕事を辞めてまで、わざわざ地元を離れてここまで来たのに。
家の中に居座り続けても、私はまだ奥さんになるのも程遠く感じて。
一体、ここに何しに来たのだろう。
少しずつ、そう思うようになってきていた。
実の所。
恥ずかしい事に。
住民票も転居届も、まだ市役所に提出をしていないのだ。
もちろん、婚姻届なんて未記入のままだ。
むなしくも。
私の名前と、保証人に私の親の名前が記入されているだけ。
こんな、中途半端な始まり方で、この先大丈夫なのか。
自分の未来に不安もまた、感じ始めていた。
日中の間は、一人ぼっち。
片身の狭い思いをして、201号室で過ごしていた。
彼が休みの日に、相変わらず手続きを後回しにしてるもんだから、それについて問い掛けた。
「ねぇ、いつ、どうするつもりなの?」
「一つずつ片付けて行きたいから、もう少しだけ」
「うん、分かった。でも、そんなに忙しいの?」
「僕しか、出来ない仕事だからね」
不器用な癖に、一人で全て抱え込む。
そんなふうに以前は可哀想だと思っていたけど。
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