5 喧嘩

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なんのために、私はこの街に引っ越してきたんだろう。 幸せになってね。 そうやって、送り出してくれた家族や友人に、こんな現象だって事を報告出来る訳もない。 《御祝》 結びきりののし紙の付いた、真新しい調理器具を見て、涙が込み上げる。 今までの自分を思い出して。 私の選択は間違いだったのかなぁ…。 そうやって、結局自分を責めたりして。 半分は間違ってない。 半分は…。 どうして彼の言う通りにしてあげられないんだろう。 どうして我慢して、辛抱して、待っててあげられないんだろうって…。 けれども、事件はまた起こった。 あの夜から、彼は相変わらず深夜帰りが続いていて、喧嘩すらもなく過ぎ去って行った。 深夜帰りは、もちろん仕事でだと私は疑う事もなく。 朝、彼がシャワーを浴びている間に、スーツにしまってあるハンカチを取り替えようとしていた。 いつもは洗濯機の側に出して置いてくれているのに。 そう思って手を入れて出てきたモノは。 バーのスタンプカード。 しかも、わりと溜まった状態。 …えぇっ?!… 「なんなのよ、これ」 私は怪しくなってビジネスカバンの中を見た。 すると、スナックの女の名刺。 それから、風俗の割引券。 訳の分からない世界の、会員カードが数枚。
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