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なんのために、私はこの街に引っ越してきたんだろう。
幸せになってね。
そうやって、送り出してくれた家族や友人に、こんな現象だって事を報告出来る訳もない。
《御祝》
結びきりののし紙の付いた、真新しい調理器具を見て、涙が込み上げる。
今までの自分を思い出して。
私の選択は間違いだったのかなぁ…。
そうやって、結局自分を責めたりして。
半分は間違ってない。
半分は…。
どうして彼の言う通りにしてあげられないんだろう。
どうして我慢して、辛抱して、待っててあげられないんだろうって…。
けれども、事件はまた起こった。
あの夜から、彼は相変わらず深夜帰りが続いていて、喧嘩すらもなく過ぎ去って行った。
深夜帰りは、もちろん仕事でだと私は疑う事もなく。
朝、彼がシャワーを浴びている間に、スーツにしまってあるハンカチを取り替えようとしていた。
いつもは洗濯機の側に出して置いてくれているのに。
そう思って手を入れて出てきたモノは。
バーのスタンプカード。
しかも、わりと溜まった状態。
…えぇっ?!…
「なんなのよ、これ」
私は怪しくなってビジネスカバンの中を見た。
すると、スナックの女の名刺。
それから、風俗の割引券。
訳の分からない世界の、会員カードが数枚。
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