1 新生活

4/5
243人が本棚に入れています
本棚に追加
/322ページ
「誰か助けてくれる人は居ないの?」 「居ないよ。僕だけが直接、社長に抜擢されて、責任者として任せられた業務だからね」 責任者として。 なのに、助けてくれる人も居ないだなんて。 おかしな話でしょ。 残業の仕方や、都合のいい休日出勤。 きっと彼は、俗に言う《窓際》と呼ばれる一人で仕事をする扱いなのだと、私は察していた。 だけど、プライドの大きい彼氏は、いつも私にはこう言う。 「僕は凄い大役を任せられて、上司から期待された人間なんだ」って。 遠回しにね。 聞いてる方は、その無理無理感の話に、痛々しさを感じてしまうんだけど。 私は一応、頑張ってる彼氏に笑顔を向けていた。 今まではね。 でも、やっぱり自分自身の将来が関わってくると現実的な話を、とことんしないと納得いかなくて。 結局、今回。 それ以上私が突っ込んだ話をすると、彼は怒ってしまって、最後は口喧嘩で終わってしまった。 それでもめげずに、 「書類なんて、要求すれば郵送で手元に届くんだよ?!簡単な事じゃない?!」 私が強く問い掛けると、 「うるっせぇな!あっち行ってろ!疲れてんだから、そんな事で話掛けてくんじゃねぇよ!!」 彼の化けの皮が、剥がれ始めてきていた。
/322ページ

最初のコメントを投稿しよう!